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ルモス ―Le Moss― 

 【  モ ス 】

取り残されし福音書 〜 

愛国の歴史的
  スーパーステイヤー




父 ルルヴァンステル
母 フィーモス
母父 バリモス

生年:1975年
性別:牡
毛色:栗毛
国籍:アイルランド
生涯成績:15戦11勝[11-2-0-2]

近年、全世界において短距離指向が日和に高まる中、いまやステイヤー血統の馬たちは部屋の片隅へと追い詰められ、見向きもされない様な時代になってしまった。
その昔、南米においてはダートの3,500mといった破格のGI競走が最高栄誉とされていたし、日本でも地方競馬にはダートの3,000mなんて一度は見て見たい超長距離戦もあった。また過去の中央競馬(国営競馬)においても、ステイヤーズSの3,600mを超える4,000mというマラソンレースも中山師走の名物競走として存在したほど。それだけ長距離を走る馬が高く評価されていたのだ。しかし、近代競馬のスピード化は顕著で、競走馬のスプリンター化はドミノ倒しのようにスプロールしていった。
長距離戦は次々と姿を消して行き、GI級競走は距離の短縮化が図られていった――。フランスにおいては、3歳馬の頂点を決するダービーさえ2,400mのクラシックディスタンスから2,100mのミドルディスタンスへと変化してしまった。
そんな中、現代においても全世界で唯一3,000m以上の長距離三冠が認定されている国が、競馬の母国・英国である。かつて栄華を極め、最強馬決定戦として燦々たる輝きを放っていたアスコットゴールドカップ(G擬4,000m)を第一冠目に据え、二冠目にはグッドウッドカップ(G脅3,200m)、そして最終関門にドンカスターカップ(G啓3,600m)と続くこのストリームラインは、アスコットゴールドカップのみが現在でも権威と格式の高さからGIの地位を死守してはいるものの、グッドウッドカップとドンカスターの威光は失墜し、凋落ぶりは目も当てられないほどである。

  
〔盤古の長距離戦を写した大変稀少な一枚。ちなみにグッドウッドカップは1812年創設。当時の距離は4,800m。ドンカスターカップは現行されている競走としては世界最古の競走で第1回はなんと200年以上前の1766年!〕


この三冠競走の特にゴールドカップの勝ち馬には、セントサイモン、グラディアテュール、バヤルド、アリスホーソーン、ビーズウイング、ザフライングダッチマン、タッチストン、シリーン…また海を渡り襲来した米三冠馬オマハを撃破したヒロイン・クワッシュドなど、伝説・神話級の名馬がズラリ。三冠を制覇した名馬としても、初代長距離三冠馬となるアイソナミー、史上最強の歴史的ステイヤーと賛謳されるアリシドンなど7頭のトリプルクラウンホースが誕生。連覇した馬は複数いるが、二年連続で三冠を達成した馬は、本馬ルモスしかいない。全世界においても、生涯に二度も三冠を達成した唯一の馬なのである。これは当然、年齢制限が無い競走であるがゆえの快挙だが、それでも二年連続となると奇跡としか言いようが無い。

 
〔米国三冠を制し、欧州へと乗り込んだオマハ。ヨーロッパでは4戦して2勝2着2回。クィーンズヴァース(芝3,600m)など勝利。ダート短距離から洋芝の長距離戦もこなすのだから、とんでもない馬である〕


ルモスは豪神のごとき気迫を迸らせ、次々とビッグレースを飲み干していった。長距離における壮烈なるままの強さは超神的で、絶対無比のスタミナと加速力を見せ付けた。

時代は1970年代も後半…彼こそが、ステイヤー重宝全盛期最後の名馬と言っても過言ではない。
移り行くパラダイムシフト。
何かに狂ったかのように、生き急ぐ現代人の日常のように、世界における競馬の競走概念の変遷は目まぐるしい変動を遂げた。
今や中距離馬・短距離馬が支配権を握り、ステイヤーは無用の長物と貸してしまった。まるで時代に取り残された化石のように…。




ルモス圧勝で歴史的史上初の二年連続三冠制覇――

祝宴の声が児玉する、その日のドンカスター競馬場へ黄昏が迫っていた。
夕映えの空、ゴスペルが響き渡る――。
まるで、一つの時代の終焉を告げるように―――。

古き良きあの時代はもう、やって来ないのだろう。
そして、二年連続三冠という歴史的遺産も、100年経っても200年経っても、もはや誰の手も届かない、唯一無二の福音書として永遠に語り紡がれてゆくだろう――…・・・きっと――。

                                        

奇跡の名馬 (仏国・独国・伊国・愛国の名馬) * 13:42 * - * - *

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