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ピドゲト

  ピ ド ゲ ト

賛美歌

愛国史上に残る女傑


(写真提供:Mr.Mikhale)

父 フォルティノ
母 プリムレース
母父 シハァンギァー

生年:1969年
性別:牝
毛色:芦毛
国籍:アイルランド
生涯成績:?戦6勝

1970年代前半というと、日本では婚姻率が下降線を辿り始め、離婚率が漸進傾向を燻らした時代である。当時、ヘレン・レディが綴った『The Woman I am/私は女』は一世を風靡し、全米ではヒットチャートの一位を記録した。世相的にも女性の立ち位置が大きく揺さぶられ変革の時を迎えつつある時代であった。ヘレンの名曲は女性の主張を代弁し、かつ雄弁に語るもので、時流の波に乗せ、その矜持は世界的に波及していった。1960年代からスプロールした女性解放運動(Woman's Liberation movement)通称「ウーマン・リブ」運動から滔々と継承されるダイナミズムは世界・時代といった未来永劫に不偏的に思える次元さえも変動させたのである。高学歴の女性やキャリアウーマンが次から次へと雨後の筍の如く力強く、そして出番を待ち続けて素振りを続けていた四番バッターに満塁のチャンスが廻ってきた時のように快捷に出現し、あらゆる領界を煽動していったのであった。「男」という存在の影の中、懊悩と煩悶の苦境で怨嗟の詩吟を紡ぎ続けてきた女性たち。それゆえなのかその潜在能力は計り知れない。


女性の権利が峻拒されていた時代・時節から競走馬には男馬を塵滅させ、世界の隅へと追いやった聖駒が存在している。キンツェム(54戦54勝。ハンガリー奇跡の名馬)やエレノア(http://umineko-world.jugem.jp/?eid=875)、リール(http://umineko-world.jugem.jp/?eid=920)といった神々しい斬然たる威光を衣にする名妃たち。三千世界をあまねく支配した万古の時代を統べる彼女たちの時次元を狄析嘆θ泙了代瓩箸任睇烋Г垢襪覆蕕弌↓犹望綺廼の女傑時代瓩1882年英国クラシック、ショットオーヴァーに代表される世代ではないか。牝馬にして史上唯一頭の2000ギニー・ダービー馬となったショットオーヴァー。彼女の血を引いたダーリア(http://umineko-world.jugem.jp/?eid=496)が躍動した1970年代…時代はまさに狃の時代瓩任△辰拭ライバルのアレフランセ(フランス牝馬三冠・凱旋門賞馬)、トルコに現れた西アジア史上最強の皇妃ミニモ(http://umineko-world.jugem.jp/?eid=667)らは女性の社会進出の象徴たる存在としてまさにヘレンの名曲を地で行く形となった訳である。



〔世界中に綺羅めく珊玉のごとき伝説の名牝たち。彼女たちの多く取り上げている当サイトだが、牝馬が牡馬をも凌駕する超絶能力を手にした際、斤量面の点や体質上の特性などから牡馬が絶対に踏み込めない領域へと到達する場合があるようだ〕

さて、そこでピドゲドである。ピドゲトは競馬界の女マルコポーロであるダーリアが世界を席巻する数年前にアイルランドで競走生活を送っていた葦毛の牝馬である。この牝馬はカマイタチのような鋭利極まりないキレと、無尽蔵に涸れることのないスタミナを抱懐していた。アイルランド1000ギニー(芝1,600m)を勝ち、愛オークスで惜しくも3着に溺れ、そして愛蘭セントレジャー(芝2,800m)を勝った…つまりは愛三歳牝馬三冠に最も近づいた1頭なのである。ちなみに、1000ギニーとセントレジャーを制した愛国の牝馬は彼女ただ1頭しかいない。日本で言うなれば、桜花賞と菊花賞を勝つような歴史的快挙であり、実際にこの金字塔を打建てたのはブラウニーと、クリフジのみである。
世界競馬史を開豁してみてみても、セントレジャーを勝った牝馬というのは十数例存在しているが、マイルの一冠目と三冠目で覇を唱えた馬というのは、ピドゲトを含めほんの数例しかない。
爛團疋殴鉢瓩箸蓮↓犹卞抬瓠脹儻譴埜世Δ箸海蹐痢Piglet”であり、牝馬らしい愛くるしい命名と言えよう。他にはプリティポリーS(芝2,000m)を勝っている。

 

  
〔第一回のダービーを牝馬が制した例も数例ある。アルゼンチンのナシオナル大賞の第一回はナナ。イタリアはダービー・イタリアーノはアンドレイナ、インドではプリンセスビューティフル、セルビアダービーをマラレサゲキンジャが制している。また近年も牝馬の台頭が顕著であるが、日本でもレダ、クインナルビー、スウヰイスー、タカハタ、ミツタロウの時代は、ウオッカ・ダイワスカーレットの躍進で大分スポットライトを浴びるようにもなったが、この世代もウオッカたちの世代に劣らぬ強豪牝馬が揃った世代である〕


ピドゲドを評価したいのは、1マイルと3,000級の長距離、どちらにも対応できた順応性能。もし愛オークスも勝っていれば…の無念が悔恨のカタルシスとなって胸を打つ。
幽玄かつ白雪の儚い雰囲気を常に燐光として放っており、凛とした不思議な馬であったという。その深淵にどれほどのポテンシャルを内在させていたのか。潜心にふける夜に粉雪がちらつく―――。


   

フェミニズムの驀進時代に現れた稀世の名牝ピドゲト。

「私は女。私は強い。私は無敵…」

あの名曲は女性を勇気づけ、覚醒させるゴスペルのような賛美歌なのだ。ピドゲトも狃瓩箸靴動国の唯一の愛1000ギニー・セントレジャー二冠を獲得。ヘレンがグラミー賞を受賞したように、ピドゲトも牡を薙ぎ倒し、圧倒したのだ。そのオーラは後の名牝たちへと海嘯となり響動していった――。



約束を果たそうとするかのように白い雪が魔法の国へと舞い降りる――…。
誰もが口を閉ざし語らない冬という時代。
銀貨を握り締める少女は今も一人勇気を奮い起こし、あの賛美歌を吟唱しているのであろう。あの北の見知らぬ小さな街角で。

奇跡の名馬 (仏国・独国・伊国・愛国の名馬) * 05:37 * - * - *

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