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ヒアーザドラムズ ―Hear the Drums―

ヒアードラムズ

 〜ける鼓動

南アフリカ大陸
     史上最多勝馬



父 ゴールドプレス
母 ウイニンググローリー
母父 ギャリックリーグ

生年:2002年
性別:せん馬
毛色:鹿毛
調教国:南アフリカ共和国
生涯成績:59戦33勝

生涯を通し、健全健康かつ一切の故障も無く競走生活を終えることができる馬…それでいてなおかつ、勝ち続けることを可能とする巨万のポテンシャルを抱懐する馬というものは、ほんの一握りにもならない。そんな観点から一望し鑑みてみると、競馬主要国において最多勝を記録した馬というのは、真に偉大なチャンピオンなのかもしれない。たとえば、米国の1880年代後期から活躍したキングストンは、なんと10歳まで走り続け、138戦89勝というとてつもない成績を残した。また一方で、早期引退のイメージが取り付く欧州競馬においても、1853年に英国に生まれたフィッシャーマンが120戦70勝という驚異的成績を残していった。
以下に各大陸・エリアごとの最多勝馬を記しておく。


各大陸エリア
   史上最多勝馬

※繋駕速歩・ばんえい除く

≪アメリカ大陸≫

キングストン
138戦89

≪欧州≫
フィッシャーマン
120戦70

≪オセアニア≫

グローミング
67戦57

≪中米カリブ海≫
コリスバール
324戦197

≪南米大陸≫

フロルデロート
72戦54

≪日本≫

キノピヨ
??戦62


そして南アフリカ大陸史上最多勝となる馬が、本稿紹介のヒアーザドラムズである。
ヒアーザドラムズはその屈強かつ頑強なる馬体を武器に59戦も走り、33勝もの勲位を勝ち取り続けたスーパーホース。南アフリカのプレスからは爛泪諭璽泪轡鶚瓩箸泙埜世錣譟⊂,狙韻鯲婿困径海韻拭ただ勝ち続けた訳ではなく、一線級で闘い、そして歴然たるチャンピオンスプリンターとしてターフに君臨していたのであるから、天晴れ、溜息の漏れる蹄歴である。
誕生の地は名門サマーヒルスタッド。2歳時にピーター・ファブリシウス氏に買い取られ、デ・マクラクラン調教師の袂へと渡ると、前途洋洋たる競走馬生活を歩み出していった。
わずか15.2ハンドの小柄な馬体だったヒアーザドラムズの評価は、良くも悪くも無い曖昧模糊たるものであったが、ピーター氏の眼力は確かなもので、南アフリカドルにして42,000の価格で競り落とされた。
その後、気性の問題もあり、去勢手術を断行されると、もはや彼には走り続けることが、天命となった。薄幸の棘道を突き進む彼を救ったのは、彼自身のコンパクトな馬体。小さな馬体ゆえ脚元への負荷が極端に軽減されていたのである。得意のスプリント路線を主幹道とし、疾駆し続けるヒアーザドラムズ。
直向に走り、屈託なきまでに無垢の心でゴールだけを見据える彼のシルエットに、ファン万員がシンパシーを感じ取り始めていた。

1勝ごとに積み重なってゆく栄光の残響。その一つ一つが、彼の心の鼓動そのままだった。
南アフリカの歴代勝利記録は四半世紀も前に記録されたスクリーチアウルの32勝。次位がリザの31勝、そして歴史的南アフリカの韋駄天センティネルの29勝。
遺功の階段を一歩一歩上ってゆくヒアーザドラムズ。偉大なる先達、スタースプリンターのセンティネルにグレンドアスプリント(芝1,000m)に並ぶ、最多勝タイを2010年3月26日、ついにマーク。


〔29勝目の口取り式。右で手綱を持つ男性がマクマクラン調教師〕

アンドリュー・フォーチュンを背にイーストケープカップスプリント(芝1,200m)を圧勝したのである。とうとう頂点へとあと一歩。王手をかけたヒアーザドラムズは、前馬未踏の領域へ向け、勇躍レースへと挑むことに。

爐修了瓩やって来た。2010年7月23日、アーリントンでの芝1,000m戦、レーシングエクスプレス・ファクトファイル・ピナクルS。慣例事項のごとく、電光石火のロケットスタートを決め、一気の猛加速を切るや忽ちに3馬身の差をつけ、6頭の挑戦者たちを遥か後方に霞み見ながらのゴールイン。62kgもの酷量がまるで嘘のような劇的な牾攵弖皚瓠
偉大な記録の誕生は、また同時に南アフリカの歴史的名馬が降誕した、まさにその瞬間だった――。


〔歴史的南アフリカ大陸最多勝記録のゴール前〕

「ほっとしました。」
そう胸を撫で下ろすのは育ての親マクラクラン調教師。
「この記録をぜひ達成させてやりたかったですから…彼のような名馬を手がけることができたのは名誉なことであり、また誇りでもあります。もうこの記録が抜かれることは、おそらくないでしょう」
胸中へ響く鼓音。
感慨深く目を細める師は、絶大な名馬と過ごした時を胸の中、想いをタイムスリップさせていった。
この歴史的一戦の手綱を取ったアントン・マーカス騎手は、次のように語っている。
「最後はこの馬に乗れていることに、なんて幸運なんだろう…なんて思ってた。けど、そんな僕をお構い無しに、彼は全身に気持ちを滾らせて走っていたからね。最高の瞬間だよ」


生き続けることに意味がある。
生きる事に意義がある。
33瓩領鮖謀巨音は彼方の胸にどう響くだろうか。

炎熱の大地を舞台に轟いた心の鼓動。
そこには何か、記録だけではない大きなメッセージがあるような気がしてならない。

ヒアーザドラムズはそのレコードを持って、我々に何を告げようとしていたのだろうか。

きっとわかる日が来るだろう…その「答え」は、絶望の暗夜を乗り越えたきっとその先に――。

   

奇跡の名馬 (アフリカ諸国の名馬) * 17:48 * - * - *

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