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クロフネ

〜大海の眠りから醒めし白き黒船〜

-“白いセクレタリアト”-



父 フレンチデピュティ
母 ブルーアヴェニュー
母父 クラシックゴーゴー

生年:1998年
性別:牡
毛色:芦毛
国籍:日本
生涯成績:10戦6勝[6‐1‐2‐1]
フリーハンデ:125(国際クラシフィケーション)

ペリー提督率いる黒船が日本へやってきたのは、1853年。外圧を跳ね返す力のない日本は飄々と受けとめるしかなく、ついに門戸は解放されることになった。

2001年、栄えある東京優駿にもついに外圧の波が押し寄せる。たった2つではあるが、外国産馬にも出走枠が設けられた。
日本競馬の発展とレベルの向上を考えると、こうした規制はブレーキにしかなっていないと思われる。本来は全レースにおいて規制がなく、外国産馬はもちろん、外国馬も出走できるのが理想形ではなかろうか。

2000年。一頭の白い馬が、門戸解放の命を受ける。地味な母の血と、短距離血統の父からはとても2400mは意識できない。しかし、“黒船”と名付けられたこの馬は、母方から潜在的大海のスタミナを。父方からは御しきれないほどの有り余るスピードを受け継いでいた。

日本ダービーに外国産馬枠が設けられたとはいえ、ハードルは高かった。GIホースかトライアル青葉賞で結果を出した(1or2着)馬、NHKマイルCで連対した馬にしか権利が与えられない。どれだけ名前で門戸解放を訴えたとしても、この条件をクリアーしなければ、出走さえままならない。

クロフネは浦河…ではなく、京都でデビュー。その巨体からはとても想像できないフワフワと浮くようなフットワークを見せ、猛然と追い込むもエイシンスペンサーを鼻差捕らえられず2着惜敗。折り返しの新馬は超のつく楽勝で2:00.7という2歳馬の日本レコードを計時。つづくエリカ賞もレコード2:01.2で楽走。
2歳最終戦はラジオたんぱ杯。クロフネはここで、現代の日本に外圧を跳ね返す力が存在したことを知る。アグネスタキオンとジャングルポケットである。2頭にひねられたクロフネではあったが、大仕事が控える春までゆっくり静養に入る。

運命の春を迎えたクロフネはさらに充実。白い幽玄とした馬体とマッチする青いブリンカーを装着し、阪神競馬場に襲来。まるで絶海を泳ぐ巨大なカジキのように、悠然と仁川を駆け抜け、1:58.6。とてもこの時期の3歳馬とは思えない、驚異のタイムだった。皐月賞前に58秒台をマークしたのは、いまだクロフネのみである。



NHKマイルC。雄大なる足取りで1着となり、ついに歴史の重い扉をこじ開けた。
ところが、本番日本ダービーでは見せ場なく5着敗退。重馬場がダメだったのか、それとも距離が原因なのかは分からない。

 
〔ペリー提督〕

                        
〔『黒船の図』(神奈川県立博物館所蔵)〕


しかし、夏を越し砂の海へ出航した時、真の“黒船ショック”が訪れようとは、誰も知る由がなかった。
天皇賞にアグネスデジタルが出走。これにより出走枠がなくなり、弾き出されてしまった。このことがきっかけとなり、武蔵野Sへ出走。

白い衝撃―。
1:33.0。馬なりの9馬身差。誰も目にしたこともない、想像を絶する光景がそこにあった。
しかも初ダートで初の古馬相手でこれなのである。
翌年のJCダート馬イーグルカフェが9馬身もちぎられてしまっていた。


クロフネの新たな航路は決定した。目標地は遥かなる砂漠の向こうの競馬場だ。
さらなる白き黒い衝撃波が日本を襲う。
第2回にして史上最高のメンバーが揃ったジャパンCダート。チリ出身の全米最強クラスのリドパレスが来日。黄金世代の最強ダート馬で第1回の覇者ウイングアロー。連勝街道驀進中のミラクルオペラ。フェブラリーS馬ノボトゥルー。ハギノハイグレイド、オリオンザサンクスほか、この時代を生きた全日本のトップクラスのダート馬が府中に集結。

独走だった。3コーナーから進出、4コーナー先頭という無謀とも言える戦法。それも全く関係がなかった。ノボトゥルーが追い掛けるが、クロフネはさらに加速。あとは一方的に突き放し、大楽勝。
掲示板には2:05.9という この世のものとは思えないワールドレコードがマークされていた。
国内外の強豪相手に傲慢な競馬で7馬身差。
ドバイワールドC優勝も間違いない。誰もがそれを確信していた。









しかし、夢は波の花と消えてしまう。


屈腱炎。突然の引退―。


夕焼けの茜色の光を背に受けて、世界制覇を夢見たあの日の記憶。
門戸解放の命を受けた白い使者は、いつの日か自分だけの夢を見つけ、舵取りを自ら始めていた。





今の今でも、ファンの目には見えてくる…砂塵の向こうに、白い黒船の幻影が―。
ファンが黒船の微睡みから開放される時は、その使者がやってくるのは、いつの日になるのだろうか―。

奇跡の名馬 (日本の名馬) * 12:01 * comments(0) * trackbacks(0) *

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