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グローミング

  【グローミング】

〜サンセットへ贈る詩〜

 

父 ザウェルキン
母 ライト
母父 イーガー

生年:1915年
性別:セン
毛色:鹿毛
国籍:ニュージーランド
生涯成績:67戦57勝[57-9-0-1]

グレート・バリア・リーフ…その渺茫たる珊瑚礁の海へ、ゆっくりと夕日が沈んでいく…。
地上と青空へいとまごいする夕日はどこか寂しげで、一瞬沈鬱な表情を覗かせる。まるでその情景は、誰かを待つように見える…誰かの詩を…。


世界第一位の大サンゴ礁が広がりを見せるそのさらに南方に、ニュージーランドは浮かんでいる。
マオリ語でアオテアロアというこの国に、人々を魅了し、無敵のヒーローとして崇められた伝説的競走馬が実在した。彼の名は“グローミング”。

ニュージーランドの「世紀の名馬」カーバインがこの世を旅立った翌年の1915年、グローミングはオーストラリア、ヴィクトリア州のメルトンスタッドで産まれた。グローミングはその後、程なくして生まれ育ったメルボルンを離れ、ニュージーランドで調教を受けることになる。
2歳時は馬体の成長を促すためレースには出走せず、調教に明け暮れ、デビューするその時を待った。グローミングは日進月歩、進化成長を遂げ、1918年、ついにデビューを果たした。どうやら陣営もこの馬の深淵に眠るポテンシャルを察知していたようで、その期待はデビュー戦の選択肢にもくっきりと顕れている。グローミングはなんと初戦から渡豪。ホームであるニュージーランドではなく、オーストラリアのランドウィック競馬場で開催されるチェルムスフォードS(芝1,800m)に白羽の矢を立てたのである。このレースは、後に伝説の名馬ファーラップ(紹介済み)も出走し2着と敗れており、簡単に勝てるレースではない。しかし、なんとグローミングはこのデビュー戦で絶対的競走能力をまざまざと見せ付ける。直線でグングンと後続との差を広げ、ゴールを通過した時には8馬身差もの大差をつけてしまっていた。さらに驚くべきことに、レコードまで記録してしまったという。空恐ろしさのあまり、身震いしてしまうような一戦を披露され、人々はたちまちこの馬の虜となった。グローミングの動向に胸膨らませ、グローミングの一戦一戦に目を輝かせた。
グローミングはデビュー戦で完全に波に乗った様で、AJCダービー(芝2,400m)を圧勝。さらには自国のニュージーランド・ダービー(芝2,400m)も楽勝し、グローミングを止められる馬は皆無に等しい雰囲気が、オーストラリアとニュージーランド両国に立ちこめ始めていた。そんな中、負けることはあっても2着までには必ず入線し、金城鉄壁の堅実さも垣間見せるのだった。グローミングが本格化したのは1919年。ここからグローミングの黄金時代が幕を開けることになる。目醒めたグローミングの強さは驚嘆してもしきれないほどで、この年の秋から2年後の1921年まで負けなしの19連勝。あまりの強靱さに、思わず溜め息が洩れてしまう。ちなみに、この記録はデザートゴールド(紹介済み)の19連勝に並ぶもので、今だにオーストラレシアン・レコードとして残っている。





オセアニア中を“グローミング色”に染め上げ、ファンを熱狂させた偉大なる競走馬グローミング。
彼は9歳になってもまだ競走を続け、その年齢になってもまだ身を第一線に投じていた。旧齢表記なら10歳ともなるこの年に、10戦して8勝を上げており、まさに衰えなどどこ吹く風という感じだ。
ちなみに父ザウェルキンの名は英語で“The welkin”と綴られる。意味は「天空、空」で、主に詩の中で使われる。そこからの連想だったのだろう。グローミングという名も、詩の中で扱われる特異な単語で、“Gloaming”と綴り、「夕暮れ、黄昏、薄暮」を意味している。馬生においても詩中で扱われるかの如く、一唱三嘆とも言える成績を残したグローミングだったが、「67戦連続連対」という史上に残る大記録を達成することはできなかった。
…とある一戦のことであった。当時はバリヤー形式のスタートだったため、スタート時の仕切りにはテープが使用されていた。不運なことに、スタートを待つグローミングにそのテープが絡まり、一頭だけスタートを切ることができなかったのである。何事もなければ、99%勝っていたか、最低でも2着には食い込み、大記録を残していたに違いない。


コーフィールドCゴールの瞬間


夕凪に映える勇者グローミング。夕日は影を細く延ばし、海と白砂へ『煌めき』という名の詩を贈る。
グローミングもまた、沈んでいくオレンジに“別れ”の詩を贈り、天へ翔て行く…。そしてオセアニアの地には、『伝説』という名の詩が残り、慇賑の中、確かに唄い継がれてゆくのだった。






  ★彡追記メモ★彡

☆グローミングは15度も海を渡りオーストラリアへと遠征している。今から90年近く昔の時代にである。

☆グローミングにはたった一頭だけライバルがいた。ボーフォードという馬で、1922年の春、グローミングが7歳の時に4回対戦し2勝2敗の五分と終わっている。

奇跡の名馬 (オセアニア・環太平洋エリアの名馬) * 00:58 * - * - *

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