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ファーウェル

  【ファーウェル】

〜宿念のカナリアカラー〜

ブラジル史上最強馬

 

父 バーファム
母 マリル
母父 ウッドノート

生年:1956年
性別:牡
毛色:黒鹿毛
国籍:ブラジル
生涯成績:17戦15勝[15-2-0-0]

あなたがブラジルと聞いたとき、何が一番に脳裏を過り、連想が膨らむだろう?おそらく、十中八九、“サッカー”…このスポーツ名が口を衝いて出ることだろう。十人十色の考えがあれど、この答えが出ないものはおそらく居るまい。
ブラジルは「サッカー王国」と世界のサッカー界から称賛の眼差しを独り占めにしてきた。神様ペレから現代サッカー最高のファンタジスタであるロナウジーニョまで、スターが出現し続け、どんな国にも負けは許されない最強軍団の地位を守り続けている。彼ら「セレソン」らは、そのユニフォームのカラーから『カナリア軍団』と呼ばれ、他国から怖れられている。カナリアとは、スズメ目アトリ科の鳥で、スズメよりやや小さく、黄色い色をした容姿と鳴き声が美しく、愛玩用としての人気が高い。その名はカナリア諸島原産なことに由来している。

1956年、ここブラジルにセレソン同様に「カナリア色の宿命」を授かった馬が降誕した。その馬の名はファーウェル。いまだにブラジル競馬史上最強馬と嘔われる名馬である。日本馬に例えて表現するなら、シンボリルドルフやディープインパクトがこれにマッチする位置付けとなろう。
ファーウェルは1958年にデビュー。圧倒的レースを展開し5連勝。すでにこの時点で同世代に敵はいなくなってしまう。翌シーズン、ブラジル競馬はファーウェルの独壇場になることが確定されてしまったのだ。その予見を当然の様にファーウェルは圧勝・楽勝を繰り返した。三冠第一弾のイピランガ大賞典(ブラジル2000ギニー、芝1,600m)を弾け飛び楽勝。二冠目となるダービーパウリスタ大賞(ブラジルダービー、芝2,400m)もほぼ馬なりのまま大勝。そして三冠最終戦、コンサグラシカオ大賞典(ブラジルセントレジャー、芝3,000m)でも、他馬がバテバテになる中、ただ一頭、まるでファーウェルの回りだけ涼風がそよいでいるかのように楽々と大勝し、無敗のサンパウロ三冠馬に輝いた。三冠達成の舞台となったジダージジャルジャン競馬場からは天をつんざくような大歓声と拍手が沸き起こり、ファーウェルの栄光を讃えた。競馬場からは上がる感動と歓喜の声がフィーバー・ピッチとなり、神々しいまでの燐光が全土へ放たれていた。

 
〔祝讃の拍手喝采に応えるファーウェル〕

ブラジル全土からの祝福を受けたファーウェルは、もはや国内に敵なしと、アルゼンチンへと遠征。この馬の脅威の強さをライバル国アルゼンチンのホースマンたちに見せ付けられることを夢想し、ブラジルのファンはその瞬間を待ちわびた。アルゼンチンでの一戦は5月25日大賞典(芝2,400m)に決められた。しかし、どうしたことか、ファーウェルはいつもの威圧的オーラをかなぐり捨ててしまっているかのように2着と惜敗。生涯初となる敗戦を味わうことになってしまう。ショックなのは関係者以上にファンだった。ファーウェルの最も得意なクラシックディスタンスでの敗戦に、愕然とした暗鬱な思いを顔や言葉に隠すことはできなかった。しかし、初となる遠征に加え、三冠レースを走り抜いた見えない反動という敗因が、ファンの気持ちを支えていた。ファンの危惧をよそに、ファーウェルは翌シーズンも順調な調整を進められ、8月のブラジル国際大賞典(芝2,400m)へと駒を進めた。ここでは一つ年上の三冠馬でカルロスペリグリーニ国際大賞典と5月25日大賞を勝っていたエスコリアル(紹介済み)が出走してきていた。ブラジル最強を賭けた闘い…その幕が切って降ろされた。レースはエスコリアル陣営のペースメーカーが、ファーウェルを惑わそうと躍起になるが、ファーウェルはエスコリアルともども、容赦なく突き放し快勝。この勝利により、ファーウェルのブラジル史上最強説は不動のものとなった。さらにはサンパウロ大賞(芝2,400m)も大楽勝。ファーウェルにとって、もはや国外での勝利が必然的な命題となっていた。ラストランに選ばれたのがアルゼンチン最大にして南米最高峰のレース、カルロスペリグリーニ国際大賞典(芝3,000m、現在は2,400m)だった。全身全霊の勢いで臨むファーウェルであったが、惜しくも2着と涙を呑むことになってしまう。もし距離が現在の2,400mだったのなら、ファーウェルのベスト距離だっただけに、勝つことができていたかもしれない。
スタッドインしたファーウェルだったが、不幸にも生殖能力不全のため、その宿運を産駒に託すことが許されなかった。ブラジル史上最強の遺伝子を自らの体内に沈め、ファーウェルは姿を消していった。

「最強」…その二文字をカナリア色になぞられ、時の彼方までその凛然たる勇士を、ファーウェルは魅せ続けることだろう。

  

奇跡の名馬 (南米諸国の名馬) * 08:03 * - * - *

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